建築の美しさを決める中で最も重要と言われている要素が「比率」です。 ここでいう「比率」とは、ものを形づくる上での調和、またはバランスのとれた縦・横の割合とお考えください。
その使用例は古く、古代ギリシャの時代から人間の体の寸法比を建築で表現していました。 「比率」を用いる事によって建物は非常に調和のとれた整ったものをつくりあげることができます。 そして正確で整った形状は、逆に感覚的に人間をひきつけるとル・コルビジェ(※)は言っています。
Ⅰ黄金比 | |
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比率 1:1.618(≒5:8)が黄金比です。 黄金比は人体や鳥、魚などの身体部分の比、 また巻貝の渦の形の中にも見つけられます。 ギリシア時代から最も調和のとれた比と言われ、 様々な建築に黄金比は見ることができます。 黄金長方形(図1)は縦横の比率が1:1.6の長方形です。 この1:1.6が長方形を美しく見せる黄金比です。 |
![]() 図 1 |
<黄金比の使用例> | |
=クフ王の第一ピラミッド= | =ギリシアのパルテノン神殿= |
![]() 底辺と高さの比が黄金比になっている |
![]() ABCDが黄金長方形 |
Ⅱルート長方形 | |
短辺と長編の比が1:√2、1:√3、1:√4、
1:√5、1:Φなどをギリシア長方形と呼びます。 この比は有名な法隆寺の五重塔から 身近なA4・B5用紙などの紙の規格寸法まで 幅広く使われています。 |
![]() 図 2 |
<√2長方形の使用例> | |
=法隆寺の伽藍配置(寺城は√2長方形)= | =紙の規格寸法= |
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モジュロール | |
建築家のル・コルビジェは、整数比、黄金比、 フィボナッチ数列などを組み合わせからなる、 美しい比率尺度「モジュロール」を完成しました。 モジュロールは人体各部の寸法にもとづいたものであり、 建物の形状を整えるために考案されたものです。 コルビジェは建築の設計に このモジュロールを多く使いました。 |
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<モジュロールの使用例> | |
=ロンシャンの教会= | =ラ・トゥーレット修道院= |
![]() *コルビジェ晩年の作品 モジュロールの法則に従って窓が配置されている。 |
![]() *リヨン郊外の修道院 |
*ル・コルビジェ:20世紀で最も影響力のある建築家といわれ、その作品は住宅から都市計画にまで広範囲に及ぶ | |
※参考文献 : 「建築美を科学する」 小林盛田著 彰国社 |