ワンポイントアドバイス

シックハウスの怖さ-1 建材編

シックハウスとは?

シックハウス症候群とは「Sick Building Syndrome」、直訳すれば「病気の家(建物)症候群」という意味合いです。つまり居住者が、建物が原因でのめまい、吐き気、頭痛、平衡感覚の失調や呼吸器疾患など、いろいろな症状や体の不調を感じることなのですが、医学的な統一見解や行政側の対応策も遅れているのが現状です。
シックハウスが「化学物質によって室内の空気が汚染された建物」に原因があるならば、問題の構図もシンプルに見えてきます。つまり、あらゆる素材・建材が「天然」のものから「合成化学物質」へ変化を遂げ、化学物質の放散源が増える一方で、高断熱・高気密等による建物の“スキマ”の減少が重なって、問題が加速化していると言うことができます。

シックハウスの症状

化学物質に対する感受性は個人差があるために、同じ状況下でも症状が出る人と出ない人がいます。症状が出ない人にはその苦しさが理解できないため、精神的な病気として扱われてしまうこともあります。
その主な症状とは、ある日突然呼吸困難に陥る、意識を失って倒れるなどの急性な症状の他に、目がチカチカする、充血する、鼻や喉が痛む、鼻血が出る、蕁麻疹が出る、激しい頭痛に襲われる、関節が痛む、慢性的な疲労症状、無気力など実に様々です。これらは他の病気の時にも出る症状なので、症状だけで診断するのは難しいのですが、その建物から外に出ると症状が軽くなり、建物の中に戻ると再び症状が出るというのが大きな特徴です。
化学物質の発生源
発生源を大まかに分類すると、「建材」「施工材(接着剤・塗料など)」「家具」「暖房器具(内部で灯油やガスを燃焼させるもの)」「家庭用品(殺虫剤等の薬剤)」などとなります。
様々な部位から発生する化学物質量を0にすることはできないにしても、なるべく化学物質の少ないものを選定したり、自然素材を使うなど、その化学物質量をなるべく減らしながら換気を適切に行うことが、シックハウス対策の基本です。
化学物質の名称 主な用途 具体的材料名
ホルムアルデヒド 合板などの接着剤として利用されている。
発がん性物質
合板・パーティクルボード・グラスウール(断熱材)・フローリング・ビニール壁紙
トルエン 接着剤や塗料の溶剤(揮発性溶剤) 油性ニス・木工ボンド・ポリウレタン、エマルジョン接着剤
キシレン 接着剤や塗料の溶剤(揮発性溶剤) アルキド樹脂塗料・アクリル樹脂塗料
ベンゼン 接着剤や塗料の溶剤(揮発性溶剤)
木材保存材 土台などの木材の防腐剤用 木材保存材(現場処理・薬剤注入)
ただし、加圧注入、浸透処理したものの放散量はきわめて少ない。
可塑剤 材料を柔らかくする薬剤。
クロス、フローリングなどの加工に利用されている。
防蟻剤 シロアリ駆除のための木材処理や土壌処理に使用されている。 防蟻剤(現場処理・薬剤注入)

自然素材のメリットとデメリット
「合成化学物質を自然素材に替える」という考え方は基本的に間違っていません。例えば「自然素材の家」という言葉をよく見かけるようになったのもシックハウス問題が一般的に認知されるようになったからでしょう。ただし、自然材料の性質上、メリットがあると同時にデメリットもあることを理解しなければ、後々別の問題が起こり得ます。
メリット デメリット
ムク材 調湿、無公害 反り、歪み
珪藻土 調湿 塗りムラ、はげ落ちやすい
自然素材防蟻材 無公害 虫がくる、効果が薄い
自然塗料 無公害 雨の時、湿気ているときは施工できない。(乾燥しない)
定期的メンテナンスが必要。
F0建材 無公害 木くい虫の寄生など
私たちはメンテナンスフリーの工業製品に慣れてしまっていますが、メリットだけの自然素材というものはなかなかありません。「生きている素材」を扱うということは、施工時には技術が必要であり、維持にはメンテナンスが必要です。
しかし、せっかく建材を自然素材(または化学物質の少ないもの)にしても、接着剤などの施工材料に無配慮では意味がありません。化学物質含有量の少ない接着剤を選定する必要があるのですが、ここで問題なのが、現場の職人などにまでこうした認識が徹底できているかどうかです。「非ホルムアルデヒド接着剤はうまく付かないから使えない」という職人がいるのも事実であり、施工に携わるなど、建物に関わる全ての人の問題意識が高まることが重要です。