ワンポイントアドバイス

シックハウスの怖さ-2 換気編

シックハウス対策の基本
シックハウス対策としての基本を整理すると、「汚染物質の発生源をつくらない」・「汚染物質を室内から排出する」ということになります。どちらか一方というわけにはいきません。
しかしシックハウスが社会問題化しはじめた当時、建材の問題を取り上げることはあっても、換気の重要性に対する意識はまだ低かったようです。人間は暑さ寒さには非常に敏感ですが、空気の汚れには鈍感なのかも知れません。一見透明で清潔に見えながら、一般の人には気付きにくい建物内の空気の汚染に対しての換気計画は、極めて重要な問題なのです。
対策としての第一歩から
「換気」と聞いて、まず思い浮かべるのが「窓を開ける」という換気の方法です。誰にでも簡単にできますし、お金もかかりません。しかし、シックハウスの自覚症状がなければ、こまめに換気を行おうとは誰も思いません。
実はこのことが改正建築基準法の大きな柱となっている「機械換気設備の設置義務化」の根拠なのです。汚染物質は、建物を構成している建材からだけでなく、暖房器具や家具、生活用品からも排出されています。きれいな空気・快適な環境づくりのためには、継続的な換気が必要とはわかっていても、なかなか習慣としては身に付いていないと思います。そこでスイッチを押せば24時間仕事をしてくれる機械換気の助けを借りましょう、というわけです。
しかしながら、機械換気に関しては必ずしも良い面ばかりでもありません。例えば真夜中の騒音、冷暖房効果の減少、イニシャルコストの増加などが考えられます。出来るなら自然換気が望ましいのですが、特に都市部ではなかなかそうもいかず、機械換気に頼らざるを得ない状況です。
換気の際の注意点
原則として、すべての建築物に機械換気設備の設置が義務付けられました(建築基準法第28条の2)。例えば住宅の場合、換気回数0.5回/hの機械換気設備(24時間換気システム)の設置が必要となります。換気回数0.5回/hとは2時間で部屋の空気が入れ替わるということです。しかしいくら計算上、換気回数を満たしていようとも、適切な換気計画がされていなければ意味がありません。
汚染物質は空気中に放散を続けます。家の中の空気が動き、外の空気と入れ替わらなければそのまま10年以上滞留し続けることもあると言われています。空気を滞留させないようにするには、単に窓を大きくするのではなく、空気の流れる道筋を考えておくことが必要なのです。
空気の流れる道筋
住宅を例にしてみましょう。
下図は、夜間や外出時の風の流れを示しています。
1階は、浴室の換気扇を使い、2階は階段もしくはトイレの換気扇を使用しています。
どの換気ルートも、窓または給気口から新鮮な空気を取り入れ、ドアの給気用スリットを通して排出しています。
きれいな部屋から水蒸気や臭い等のこもりやすい部屋に向かって空気の流れる道筋を考えます。


おわりに
前回の「建材編」では、建材だけでなく施工材料にも気を配り、施工に関わる全ての人間がシックハウスへの問題意識をしっかりと持つことが重要であると述べました。今回の「換気編」に関しても、例えば換気設備のスイッチをON/OFFするのはやはり人間自身ですから、どんなに優れた条件が揃おうとも、それらを正しく使用し、稼動させることが出来なければ意味がありません。
材料選びや施工に関しても、設計者・施工業者に任せきりにせずに、あらゆる事柄に興味を持ち、竣工後の住まい方や使用の仕方に関して設計者・施工業者へきちんとした説明を求めることも忘れてはいけません。結局は施主自身がどれだけ参加意識を持つかが大切なのです。