ワンポイントアドバイス

建物の断熱について

Ⅰ.断熱の種類

私たちの生活環境は建物の断熱性能によって大きく左右されます。
夏の暑さ、冬の寒さなど、外気の影響から建物を守る(和らげる)ことを「断熱」と言います。
そして断熱をするために「断熱材」を用いるのですが、
この「断熱材」を構造体の室内側に設置することを「内側断熱」、外気側の場合を「外側断熱」と言い、
構造体がコンクリート造または組積造に限って「内断熱」「外断熱」と呼んでいます。

※一般に木造・鉄骨造の場合、「内断熱」「外断熱」ではなく、柱や梁などの骨組みの中に断熱材を入れる工法を「充填断熱」、柱や梁などの骨組みの外側に断熱材を張る工法を「外張り断熱」と言い区別しますが、ここではコンクリート造・木造・鉄骨造それぞれについて「内断熱」「外断熱」という言葉を使うことにします。

Ⅱ.どっちが良いの?

欧米諸国ではその利点が高く評価され、ほぼすべてのコンクリート建築に「外断熱」が用いられていますが、
日本では主に「内断熱」が採用されています。
火事や地震の多い日本では、とにかく建築は「防火・防災」が重要視されてきたため、
断熱材のようなものを外側に設けるというのは、防火・防災上好ましくない、とされてきたようです。
加えて「コストが高い」「工期がかかる」「意匠性について制限がある」などの理由も挙げられます。
  そこで吹き付けタイプの断熱材で室内側に断熱層を設ける等の方法で、
部屋の中に外気が伝わらないように工夫してきました。
  つまり性能が優れているという理由で内断熱が採用されてきた訳ではないので、
  技術さえ追いつけば、今後外断熱が主流になっていくと思われます。

Ⅲ.外断熱のメリット
近年、日本でも「外断熱」というキーワードが注目されています。
メーカー側も研究・開発を重ね、次々に新製品を出してきています。
では外断熱を採用する利点は何でしょうか。

○建物(構造体)の保護
内断熱の場合、構造体が外部の温度変化や紫外線、
雨などによる影響を受けやすく、少しずつ劣化が進みます。
外断熱で建物の構造体を覆うことで、建物の耐用年数を延ばす事が出来ます。

○省エネルギー
コンクリートには「温まりにくく冷めにくい」という性質があります。
内断熱はコンクリートの温度が外気温に大きく左右されますが、
外断熱の場合、コンクリートが室内温度に同調しようとするため、
その蓄熱効果により室内温度が安定し、結果としてエネルギーコストを抑えることに繋がります。



○結露の防止
内断熱の場合、室内の水蒸気は断熱材を透過し、
外気により露点以下に冷やされた構造体に当たり内部結露が発生します。
その結露はカビを呼び、カビはダニを呼び、またダニの死骸はカビを呼ぶという悪循環が起こります。
一方、外断熱では、特にコンクリートは室内温度に同調することで表面温度が上り、
結露の発生を抑えられるので健康な室内環境が望めます。



Ⅲ.外断熱工法の現状

このように外断熱の性能優位が論じられる昨今ですが、
現状の日本では施工性とコスト面において、まだ内断熱の方が優位な状況です。
ここ数年で消費者からの注目度も高くなり、「低コスト」「工期短縮」「意匠性」についても、
技術改良を重ねて、それを売りにしているメーカーもあるのですが、まだまだ技術の遅れがあるのも事実です。
そもそも今まで当然のように内断熱を採用してきた(選択肢がなかった)ことが問題なのですが、
外断熱工法が徐々に市民権を得ようとしている現在は、
新築だけではなく改修の際にも、検討事項の一つに入れておきたい項目です。
今回は主にコンクリート造における内断熱・外断熱についてでしたが、
木造・鉄骨造における断熱方法についても施工者まかせにせずに、是非興味を持って頂きたいと思います。